水槽の脳 1982年に、ヒラリー・パトナム 〔1926~2016・アメリカの哲学者 心の哲学、言語哲学における中心的な人物の1人〕が 「水槽の脳」という思考実験を提唱しています 人から脳を取り出し 脳が死なないよう特殊な成分の培養液で満たした水槽に入れる 脳の神経細胞を、高性能なコンピューターにつなぐ 脳は、コンピューターと電極によってつながり 水槽の中にプカプカ浮かんでいる 脳は、コンピューターの操作により 通常の人と同じような意識(心)が生じる 例えば、自分は今、可愛い女の子とデートしているとか 今、おいしいもの食べているとか・・・ そこで、≪現実に存在すると思っている世界は このような水槽の中の脳が見ている幻覚ではなかろうか≫ もし、≪物事は、我々が認識しているように実在している≫ ということになると 水槽の脳が認識している 「可愛い女の子とデートしている」とか 「今、おいしいもの食べている」とかいった 事象は、事実として行われていなければならない という主張が「水槽の脳」です この主張からすると、人間が認識する世界とは 全く別のあり方で、実際の世界は実在しているかもしれない ということになります また、客観の実在性も怪しい ということになります しかし、我々の認識における仕組みというのは ある情報=刺激を、五感が受け取り その刺激を、神経を通して脳へと伝え 脳が「可愛い女の子とデートしている」とか 「今、おいしいもの食べている」とか認識していますよね つまり、外部の情報=刺激 を受けた五感の細胞が この刺激を電気信号に変換し 神経細胞を通じて脳に伝えることによって あるモノやコトが、認識されるわけです このように 心とは、五官(五感)と、神経、脳によるネットワーク より生みだされているのです 現代文明は、電気信号を用いて通信し 電気信号を用いて情報処理を行っています これと同じように、人間の神経細胞(ニューロン)は 電気信号を用いて情報伝達を行っています ニューロンは、感覚器官からの 視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの情報を 電気信号にかえて、脳に伝達する 脳は、それらの情報を処理し 次の行動を決定し電気信号の命令を出す これがニューロンを通じて、筋肉に伝えられます 「水槽の脳」は一見完璧な理論に思えますが 単に、五官の役割を コンピューターによる情報の入力操作に置き換えた というだけの話です 脳が、受け取ったデータ(情報)を 実在として知覚し、認識するという点 通常の我々の認識、五官による認識となんら 変わりはないということです つまり、≪現実に存在すると思っている世界は このような水槽の中の脳が見ている幻覚ではなかろうか≫ なんて、たいそうな話でないということです 「可愛い女の子とデートしている」 という情報を入力したのに 水槽の脳が 「猫に餌をねだられている」なんて認識をおこす というのなら、話は別ですが(笑) 逆転地球 ![]() スワンプマン (ひとつ戻る) |
|